県大会に向けた[合宿]は、1泊2日の日程を全て終了。

・・・・・・したが、どちらかというと本番はこれから・・・のようだ。








   ――水泳っぽい100のお題 [084. 水の流れに身をまかせ]




蜷川家(イカダ)、ほぼ全壊。

全壊だけならまだしも、見渡す限り・・・海。


「みっみなさん!大丈夫ですかぁぁ!!?」
大雨と強風に打たれながら 悲鳴に近い声で生田が叫んだ。
「えっ・・・ええ ・・・・・・っていうか・・・」

「こ… ここどこよォォォオオ!!!?」


幸いにも床は全て残っている・・・が、
壁は窓ガラスがついた面1枚を残して ほぼ全て吹き飛んでいる。
内装も中央の支柱とソファーがかろうじて残っているだけで あとは酒のビンがちらほら。
打ち上げバーベキューを前に突然降ってきた雨をしのぐためにイカダを選んだ4人(織塚・静岡・蜷川・生田)の荷物も飛ばされて、
嵐の前に着替えていた彼女たちは 服まで飛ばされて・・・上半身ハダカ姿で支柱にしがみついている。
(生田は 支柱を抱えたような状態で立っている織塚にしがみついている)

「あー・・・また杭ぬけちゃって流されたのかも? 時々あるんだよね」
なんでそんなのん気なの!? 家も全壊したのに!!」
困ったような・・・というか、いつもの 腕を頭に回した笑顔で蜷川が言うが・・・
織塚のような常識人(?)であれば 間違いなくそうツッコむ。


「ぐ・・・
ゴゴォン!

「ひいっ!!」
「り・・・陸はどっち!?」
雷がまともに彼女たちを照らし出し、一瞬まぶしくなりながらも
「あ・・・ あれです かね・・・!?」
静岡はできるだけ体を隠すように小さくなってしがみつきながら 遠くを見た。
静岡の見ている方角を織塚たちも向く・・・と、

「ウソォ!?」
「ホントにやばいじゃない!」
海に面している海猫市・・・と思われる街の明かりの集合体が はるか遠く、点の集まりのようにしか見えない。


大雨の中、必要以上に叫んでいるせいで 小さな声だと何も聞こえないで終わってしまう場合が多い。
「ぐい゛・・・」
その声も、例に漏れず・・・
「うぅ・・・」

「・・・・・・今!何か聞こえませんでしたー!?」
風はおさまってきたが 雨が海に当たる音が激しい。
そんな中で、生田はうめき声のようなものを聞いたらしい。
「何かって! 何よー!?」
だんだん雨も弱くなってきた。
だが漂流したパニックか何かで 派手に声を張り上げて答える織塚。
「えっと・・・!うめき声・・・みたいな・・・」
「うめき声?」
雨の勢いが一気に弱まってきた。
このぐらいになれば 普通のトーンでも充分聞こえる。

「だずげ・・・で・・・」
「「「!!?」」」
声のした方向・・・ソファーの奥を見てみると、杭だったモノを ヒトの手と思われるモノが握っていて・・・
その腕をたどると、白い布のようなものが見える。

「ちょ・・・!? なにこれどういう状況!?」
織塚は慌てて浮いている腕をつかむと 生田・蜷川・静岡も織塚をひっぱるようにして その腕をひきあげた。
ずるずるとイカダにあがってくるその体は、

「「「「!!?」」」」


敬称があったりなかったり、普段呼んでいる呼び方ではあるが(一人例外あり)
ようやく着いた仮の陸上で咳き込んで水を吐いているのはだった。

「げほっ・・・ うう・・・溺れなくてよかったっす」
「よかったね〜!」
「・・・フツーに今溺れてたじゃない・・・ 助けてとか言ってたのはどこの誰よ?」
「がふっ・・・ そ、それとこれとは 別・・・」
「・・・・・・」
(と蜷川)に もはやツッコむ気力もない織塚は 本日何度目にもなるため息をついた。


「で? なんであんなところにへばりついてたのよ?」
ソファーに座りながら 織塚は横たわっているを見下ろしながら事情聴取を開始した。
・・・何度も言うように、最初からイカダに乗っていたメンバーは 着替えている途中で嵐に襲われたため、
簡単に言うと 彼女たちは[パンツ一丁]状態にある。(静岡だけは短パンもはいているが)

「なんで・・・って、杭が抜けそう だった・・・から」
「・・・フツーそこなら諦めて手放すとかしない?」
「まぁ、しますけど・・・心配 だったから・・・」
「・・・っ、 それは・・・ありがたい けど・・・」
は 最初は沖浦たちと同じ様に 崖にできたほら穴に避難するつもりでいた。
しかし杭が外れたところを目撃してしまったため、荷物をほら穴に突っ込んで とりあえずイカダに走った・・・らしい。
「一応ケータイならポケットに入ってます」
「あら・・・  って、それだけ長いこと水に浸かってたら使えるわけないでしょ」
一瞬助かる!と思った織塚だったが、よく考えてみればその通り。性能がよくてもそんな強いケータイなんてありは・・・
「そうっすか? ・・・あ、生きてる」
しないわけでもなさそうだ。
「「「「ホントに!?」」」」
座ったり横になったりしながら2人の会話を聞いていた3人は 弾かれたように起き上がった。
「とりあえず電話しましょうか ・・・・・・えーっと、海の遭難は・・・っと」
「「「「・・・・・・」」」」
「――はい、えーっと・・・海猫市から南?の沖、木の板でできたイカダに5人ぐらい乗ってます。・・・はい、お願いします」
この一連の動作を、は友達に電話でもするような体勢で(横になりながら)していたのだから誰もが唖然としている。
さすがの蜷川も おぉーっ・・・ と感心しているように見える。

「・・・一応連絡はできました・・・が、さすがにこの天気というか真っ暗なので 時間かかると思います」
「え、ええ・・・助かったわ。  でもなんでそこまで冷静に・・・?」
同じ様に冷静にツッコむのは織塚。その他のメンバーも同じ様なことを思っている顔をしている。
「えっと・・・ 小さい頃から しょっちゅう迷子になってたんで。海で」
目を伏せながら苦笑する。ここにも海の女(?)がいた。
「とりあえず助かることは決まったので、待ちましょう」
「ええ、でも本当に助かったわ・・・」


ぐぅぅ・・・

「お・・・おなかすいてきました・・・」
「あむろも〜・・・」
「み・・・水と 上着・・・」
「・・・さっきのバーベキュー、何も食べれなかったのは痛いわ・・・」
「・・・・・・」
助けがくることは決まったものの、次の悩みどころは・・・この空腹。


「食料なら・・・」
「「「「「!!」」」」」

「ここに あるんだな・・・!」

買い出しのために引き返したはずの武田が 突然壁の向こうから出てきた。
あの嵐の中をどう乗り越えたのかは分からないが、
その手にはしっかり、お茶とドーナツが入った袋が握られていた。
「たっ・・・武田! あなた乗ってたの!?」
全員が武田に近づく中(一人例外あり)、織塚がとりあえず驚いていた。
「陸から離れるギリギリ前に乗ってたんだな」
「つまりさんと同じぐらいのタイミングだったんですね〜・・・助かりました!」
食べ物があるかないかだけでこの待遇の違い。
遠くで横たわっているは せめてワカメぐらい拾っとけばよかった・・・とつぶやいていた。

「あー・・・助かったわ。ホラそれ渡しなさい」
片手で胸を隠しながら織塚が手を伸ばすと 武田はサッと自分の方に食料を寄せ、一旦彼女たちから背を向けた。
「・・・・・・だな」
「えっ?」

「頭 (ず) が高いんだなーーー!!」


「!!!」
この状況でもったいぶることに苛立つ織塚も分かるが、
確かに食料はそれっきりしかない。(役立たず・・・)
更にパシリにさせられた挙句もう1回買いなおして来いと言われたり普段から足グリ(?)されたりしている彼にしてみれば、
逆にいい目をみるチャンスにもなる。(かなり方法が手荒いけど)


「たけだセンパーイ!!」
「う?」
一挙動で起き上がったに 武田をはじめ全員が振り向いた。

「どっ・・・どうか私たちに食料恵んでやってください!」


「「「「「・・・・・・」」」」」

何と立ち上がったかと思えば、今度は一挙動で正座になり、土下座する準備を完ぺきにしている。
しばらく沈黙の後、イカダの床から 足音が聞こえてきた。
は多少なりとも期待していた。・・・とりあえず食料に。

だが、


めこっ
「ぅがっ・・・!」
本人も一応感覚で分かっているが、誰かに頭を踏まれている。(誰であるかは言うまでもない)
外から見ると、かなり悲惨な状況。

「あんたねぇ・・・! そんな簡単にあいつに頭下げてどーすんのよ!!」
声を殺して織塚が叫ぶが、波の音にさえぎられることもなく 全員の耳に届く。
よく見ると、足を動かして頭にぐりぐりしているのが分かる。
「だっ・・・だから・・・少しのガマンっすよ・・・! てか・・・ハゲるからやめてください・・・っ」
織塚と同じトーンで精一杯主張する
「・・・少しのガマンって・・・」
「食料はあれしかないんすよ!・・・いくら助けが来るといっても こんな時間に来るかどうかは分かりません!」
「・・・・・・」
「だったら、少しでもセンパイの機嫌とって 食料ゲットっすよ!」
「・・・・・・少しのガマン ねぇ」
そういうと織塚は の頭から足を離し、なにかすればいいのね?と武田に振った。

「じゃ、じゃあ・・・一人ずつ猫ちゃんになりきって色っぽ〜くおねだりするんだな・・・!」
「(・・・たけだセンパイらしい命令だなぁ・・・)」
再び横になったは ぼんやりと彼らを眺めていた。


「うーん・・・ たべもの ちょ・お・だ・い にゃん」
ぶりぶりと効果音が聴こえてきそうな織塚のにゃんこっぷりは失格。・・・オバサンくさいと追い討ちまでかけられた。
「おニャかペコペコだニャー」
自分でニャンニャカニャーンとか言ってる生田のにゃんこっぷりも失格。・・・体が色っぽくない などと無茶なことを言われながら。

それでも武田の表情を見ると、織塚のにゃんこっぷりはそう悪くなさそうだ。
「えっ・・・私も やるんですか・・・?」
生田がヘコんでいるそばで 織塚の視線に気付いた静岡がつぶやいた。

「う・・・あ・・・っ、御主人様・・・ く、くださいませ・・・ニャン」
目を逸らし赤面する静岡のにゃんこっぷりも失格。・・・ただ、武田のジャッジ(表情)では 今のところ一番は静岡のように見える。
「すぐに合格させない気ね!!」
そろそろ沸点に到達しそうな織塚がそばで言った。
ふと、まだおねだりしていない蜷川とを見た。
蜷川はなんだか準備万端っぽいが・・・・・・
「ほら、あなたもやりなさいよ」
「え、自分もっすか!?」
「そうよ!・・・っていうかガマンって提案したのあなたでしょ!?」

「えっと・・・ほら、自分もジャッジっすよ。自分 色っぽくないし。・・・あ、自分だったら全員ごうかぐふっ


「・・・・・・っ!!」
「だぁぁぁぁああああっ!! ぃ・・・っ!痛いっす!!」
言葉に出来ない苛立ちを込めて 織塚は再びの頭を足でぐりぐりし始めた。
軽く床にめりこんでいるぐらいの勢いでそれはもうぐりぐりぐりぐり・・・
そうしているそばでは 蜷川が本格的に猫になりきって(「なー」とか言ってみたり上目遣いだったり四つんばいだったりして)いる。
と、
武田の周りをぐるぐるまわっていた蜷川が 急に猫から猛獣に変わった。


「んがぁ・・・!」
あまりの猛獣っぷりに武田は思わずのけぞり・・・そのまま海に。
もちろんドーナツもお茶も一緒に。
「せめてお茶だけでも・・・拾ってきましょうか・・・?」
「バカ! よっぽど体力がないとそんなもの持ち上げられるわけないでしょ!?」
「・・・・・・」
「ドーナツが・・・」
「んもう・・・蜷川さん何やってるのよぉ・・・」
武田が落ちた水面を眺めながら へなへなと全員が座り込んだ。
織塚の足グリから解放されたは 立ち上がって辺りを見渡してみた。
視力は元々よくないので 大して何も見えていない。


しばらくして武田があがってきた。
「うー・・・あぶな・・・」
と、イカダに乗っている彼女たちを見てみると・・・


「っていうか武田ぁ・・・」

ヴーッ・・・ヴーッ・・・

「おっと・・・」
全員が武田に詰め寄っているところで、のケータイが震えだした。
身に覚えがあるようなないような番号だが、とりあえずはひとり、その状況を置いといて電話に出た。
「そもそもアンタがあんなことしなけりゃ・・・こんなことにわぁ〜!!!」
「う・・・うぅっ・・・」

「もしもし? ・・・・・・あ、はい。ん・・・・・・そう!それっす! あのできれば早く来てください! 修羅場になってるんで・・・!!



「ぎぃやほぁああうあぁぁぁああ」

「あ、聴こえました? そうっす・・・  ぁあ・・・ホントえらいことになっちゃった・・・!!」


最後までマイペースなだった。










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蜷川さん並みにマイペースな主人公さん。彼女以上かもしれないけど。
もしそんな状況になかったら[慌てるのそっちじゃないでしょ!!]って誰かがツッコんでくれたはず。
「えらいことになった」って 中部地方(特に三河?)の方言かもしれませんが気にしないでください。



(07.10.8)
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