ウミショー水泳部は 県大会に向けて[合宿]なるものをおこなうことにした。

・・・・・・ほとんど副部長ひとりによる決定 ということは言うまでもない。








   ――水泳っぽい100のお題 [090. 助けて!?]




土曜日。時刻はまだ・・・8時前。


「おおーっ!」
学校の敷地内にある合宿棟に初めて入った1年生(+蜷川)たちは みんな目を輝かせている。
新しいとはいえないが、きれいに掃除はされているし 何より部員全員が寝転がれそうなぐらいに広い。

「広い広〜〜〜い!」
「ウチのガッコにこんな部屋あったんですねー」
「中学んときの宿泊訓練思い出すような部屋だなぁ・・・」
などなど、とにかく部屋を見回す新入りメンバーたち。
「さ! 荷物置いてすぐはじめるわよ。 いい?テーマは協調性よ!!」
部屋に感動している彼女たちに温かいとも冷たいともいえない眼差しを向けながら、織塚は言った。
チームワークを養うための合宿。
個人競技といえども気持ちを一丸にして取り組むことが大切。
・・・と、先日碇矢も張り切って着替え中の女子更衣室を全開にして叫んだとおり、
協調性を重視する合宿なの・・・だが、

「たたみ きもちいい〜〜〜」
「コラー!!!」
言っているそばから蜷川は部屋をひとりで転がり始めた。
今回織塚が一番頭を痛めそうな部員に違いな・・・さそうだ。
その一方で、
「(・・・水泳でも合宿なんてやるんだ〜・・・。気合い入ってる部活しかやらないモノだと思ってたけど・・・)」
なんだか最初からウミショー水泳部を気合いの入っていない部活だと決め込んでいたようで、驚きが表情にも出ている
「わぁー・・・でも合宿なんてハジメテですよォ! 静岡センパイは 去年経験あるんですよね?」
と目を輝かせる生田。生田たちの後ろにいるも、合宿するのは初めて。
「え・・・あの・・・」
生田の質問に静岡は赤面し、目をそらしながら
「ざ・・・残念ながら・・・まだ、経験とかは・・・でも興味は あり・・・ます
「静岡センパイもハジメテなんですねぇ〜! (合宿・・・っ!何が起こるのか!)」
「(マッキーとみれいセンパイは話がかみあってないんすけど・・・)」
マッキーのは合宿自体の話で、みれいセンパイのは・・・・・・まさか・・・
がそこまで考えをめぐらせて更に赤面までしたところで、
「ほら行くわよ!!」
「「「はーい」」」






「――そう、これよ・・・」
今にも指か爪かをかみだしそうな表情で 織塚はプールサイドからプールを眺めていた。

「これをどうにかしなきゃ! ウチの水泳部に明日はないわ!!」

織塚が眺めるその先では、
ビーチボールまで持ち出して遊んでいる部員から、浮輪の上に乗って寝ている部員から、
2本のコースロープを使って部員の行く手を阻む部長まで。
プールサイドでも、道具を準備するマネージャーその1をプールにひきずりこもうとしている部員、
少し泳いだかと思うとすぐあがって楽しくおしゃべりしている部員・・・・・・

「なんつーか・・・普段の練習以上にダラけちゃってます ね・・・」
マネージャーその2ことは、腰に手を当てて仁王立ちしている織塚にボソっとつぶやいた。
それを気にしてか気にせずか、
「蜷川さん!宿直室行ってドリンク作ってきて!!」
「えーっ・・・どうやってつくるのー?」
「ドリンクの粉と水入れりゃ完成よ!! ホラ早く!!」
「ふーい」
1番近く(といってもの次に近いところ)にいた蜷川に沖浦の代わりを頼んだ。
「で、さん!あなたはマキオちゃんの・・・ ・・・・・・って!」
と、織塚が振り向いた先には当の彼女がいない。
「ちょっとぉ!? あの子までどこ行ったのよ!?」
「あー・・・さんなら 今キーパー持って、あむろ追いかけていっちゃいました」
蜷川からようやく解放された沖浦が 疲れ気味に言った。
「・・・・・・」



――宿直室にて。
「あれー?ちゃんだ〜!」
「あむろセンパーイ・・・キーパーと粉、忘れてますよ〜」
宿直室入り口でなぜか息切れしている。蜷川を追いかけるのに手間取ったらしい。(そもそも宿直室の場所を知らなかったから)
「あ、そっか!忘れてきたんだ〜」
蜷川がえへへ〜と例の笑顔を見せると、はそれらを蜷川に手渡した。
「どれぐらい水を入れるかとかは全部箱に書いてありますので」
「・・・ふむふむ・・・」
「じゃ、自分は着替えてくるので」
「まったねー!!」
そう言いながら蜷川のもとを立ち去る際、は部屋の真ん中に無造作に置かれたペットボトルに目がいった。
「(なんだろ・・・あれ? ホントにただの天然水?)」
と、すぐに蜷川がそれをつかんでキーパーに入れはじめた。
「(・・・・・・ま、いっか。  おっと・・・急に抜けたからヅカセンパイに足グリされちゃう!)」
結局は そのまま宿直室を後にした。



――再びプールサイドにて。
「(ふー・・・っ、まだ6月入ったばっかなのに・・・あっちぃなー)」
タオルと青いミラーゴーグルを振り回しながら、は更衣室を出てプールサイドに向かった。
階段を降りているところで、織塚がドリンクを独占している状態にあるのがよく見えた。
「さっきまでのはなんだったんだろう・・・なんかみんなマジメに練習してる・・・」

「かなめセンパイ!」
はゆっくり沖浦のそばまで歩いてきた。
「あ、おかえりさん」
「なんか・・・ヅカセンパイ、ふらふらしてませんか?」
「・・・うん、さっきからオレもそう思ってた。 ・・・・・・先輩、どうしたんですか・・・?」
沖浦の声に 織塚はゆっくり振り向いた・・・が、

「ふぅーん?」

「「!!?」」
なんだか顔が赤い。目つきも先ほどまでとは全然違うし、酒に酔っ払っているという表現がまさに適切な状態にある。
「なァに・・・このアタシに文句でもあるのォ〜? ねぇ〜〜〜」
そういうと織塚は まず話しかけられた沖浦の方に絡み始めた。
沖浦のあごを持って 顔・・・というか唇が付く寸前まで顔を近づけている。・・・普段の彼女なら絶対にしない。
もちろんこんなことをされれば普通の男は顔を赤面させ慌てる。沖浦も例に漏れない。
「(うっ!!? ・・・こ、このにおいは・・・・・・まさか!?)」
考えをめぐら・・・せなくとも、これの元はあれしかない。
「あ・・・あむろ! おまっ・・・本当にフツーにドリンク作ったのか!?」
「んー? うん!スポーツドリンクの粉に[うんまい水]、入れて作ったよ〜!」
「うんまい水・・・!?」
「なにぃ!? あの献上したアレを使っただとぉ!?」
「うん」
沖浦と蜷川の会話を聞いていた(と思われる)碇矢が プールの縁から叫んだ。
男子部員は 毎年あの部屋を女子部員に追い出されるらしく、管理人さんに何かを献上して宿直室を使わせてもらっているらしい。
その献上しているアレとは・・・
「バカヤロォ! アレは幻の名酒 [薩摩漢]だよ!!!」

「やっぱり・・・」
管理人さんの喜びよう、しかも[今夜ゆっくり]とか言ってたから、うすうす想像はしてたけど・・・
と、沖浦が思ったところで 彼は蜷川がドリンクを作ってくる前のことをついでに思い出していた・・・
「・・・っていうか!さんもあむろについてったんだろ!? なんで止めなかったんだよ!?」
「えー? そりゃぁ部屋の真ん中に無造作に置いてあってしかも開封済でたっぷりとかおかしいなーとは思いましたよー・・・でも」
「でも!? でも って・・・
と、沖浦がをとがめ始めようとしたところで、


「ふぅう〜・・・暑いわ〜」
「「わーーー!!?」」
2人のマネージャー(一方は半競泳選手)が同時にハモった。
いつのまにか座り込んでいた織塚が 水着の肩口に手をかけはじめたからだ。・・・というより、もう引っぱっている。
「(この手の動き・・・)  ・・・ヅカセンパイ! まさか脱ぐんすか!?」
「脱いじゃダメだっていうのォー? んんー?」
「(うわー・・・こりゃもうダメだ・・・)」
立ち上がった織塚に顔を近づけられ、とても逃れられる状態にはないのに なぜか他人事ぶっている
「あたしのからだぁ・・・魅力ない っていうのぉ〜〜? ねぇ、 ねぇ・・・」
「いやありますけど!」
肩口がさがり 今にもぺろっといってしまいそうな(実際にはいくわけがない)それをはチラっと見ながら即答した。

「「「(そこ認めるんだ・・・)」」」

部員たちの心のツッコミをよそに 織塚のへの絡みつきはさらにヒートアップしている。
「し ず お か や あ む ろ よりも魅力ないっていうのぉ〜〜〜!?ホントはあたしだってキレイどころなのよ!!」
の忠告を聞いているのか聞いていないのか更に自分の主張を続ける織塚。
泥酔しているせいか、絡み付いている相手が女子であるということに気付いていないようにみえる。
「だからそれは知ってますって!」
「じゃあなーんで脱いじゃダメだっての!? ねぇ・・・ ねぇっ!?」
「(・・・欲求不満?)」
プールに浸かっている部員からはよく見えないが、は なぜか微笑している。

もしかしたら彼女はこの状況を楽しんでいるのかもしれない・・・
そんな考え(仮説)に至った一部の部員は顔を青くし始めた。


「(どうしよっかなー・・・ でもさすがに脱がせるわけにはいかないし・・・てか何言っても聞いてないしなぁ・・・)」
案の定、彼女はかなり邪なことを考えていた。
ちなみに彼女が沈黙している間も 超至近距離で織塚は[ねぇ、ねぇ・・・!!]とか[んんー?]とか言いながら絡んできている。
その横では何も言えずにただ沖浦がわたわたと慌てている・・・が、絡まれている本人はかなり平然としている。

結局、一番のツワモノは かもしれない。



と、
「ちょっ・・・ヅカセンパイ!?」
何を考えているのやら、織塚はの水着の肩口に手をかけ始めた。
「・・・あんた・・・あたしより魅力あるってんの〜〜?」
「誰もそんなこと言ってないっす! てか自分から脱ぐんじゃなくてついに人を脱がすですか!?」
「(さすがのさんでも・・・脱がされるのだけは拒むよな・・・フツー)」
そこだけは人並みだったことに、沖浦はなぜか安堵していた。

「だったらあんたが見せればいいじゃないの〜〜〜? んん〜?」
「だっ・・・だダメっすよ! ちょっ・・・わ!!?  水着プレイっすか!?○ズっすか!?」
「(それはちょっと違うんじゃ・・・)」
あまり冗談に聞こえないの叫び。
こうなってくると 元々どっちが酔っ払っていたのかが分からない。
そしてそんな彼女たちに心からツッコミを入れるのは沖浦。


「ヒト脱がすぐらいだったら自分で脱いでくださいよ!!」





「「「え?」」」



「あれ・・・え・・・・・・ ぐふっ!?
「しょうがないわね・・・」
そういうと 織塚は思いっきりを蹴り飛ばして プールに沈めた。
どうやら先ほどの言葉は全て分かっていたようだ。


「じゃあみんなに・・・」
一旦織塚はプールに背を向けると、ついに水着を脱ぎ始めてしまった。

「・・・えっわっ!?」
水底からあがってきたをはじめ、多くの部員(一部除く)がざわついた。
「アタシの、 魅力・・・」
振り向けば丸見え。


「見せてあげるんだからっ!」



「ちょっ・・・わぁあ!!」
唯一プールサイドにいた沖浦が必死で隠そうとしたが、
結局織塚は水着を脱ぎ捨てて、わざわざ飛び込み台に立ってからプールに飛び込んでしまった。








「うーん・・・」
なんだかんだで練習を終わらせて、女子部員は全員部屋に戻ってきていた。

「昼間の記憶がないんだけど・・・ 何があったの?」
ひとり壁にもたれかかって頭を押さえているのは織塚。
女子だけでなく男子部員もいる手前、2人のマネージャーに絡んだ挙句ハダカになってプールを泳ぎ回っていたことを覚えていないらしい。
「いえ・・・何も・・・」
微笑しながら全力で昼間の出来事を(自分の中でも)否定する生田。その他大勢の部員も苦笑しながらうんうんと頷いている。


但し女子部員たちが一番心配しているのは 泥酔した副部長よりも、
今この部屋でごろごろうたた寝をしている半マネージャー ・・・の方かもしれない。










~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

長っ!!(?)
ちょっと泥酔シーン引き伸ばしすぎた気がしてます。でも原作で好きなシーンなので(何で・・・
タイトルは「助けて!?」ですが、一番救いようがないのは作者 です・・・orz



(07.9.8)
ブラウザを閉じてお戻りください