中学生活は早くも1年が終わり、2年生に進級した。
進級の際にクラス替えが行われたものの、私たち3人は幸いにも再び同じクラスになれた。
「この勢いで3年間ずっと一緒になるといいな!」
「うん!」
「そう だね」
・・・こんな会話をしたこともだいぶ昔だったような気がする、そんなある日のこと。
休み時間にいつもどおり3人で窓際で日向ぼっこをしていると、
「見たか、あれ」
「あー、あのでかいヤツ?」
「あいつホントに中学生なのかよ」
・・・などという声が聞こえてきた。
どうやらクラスメイト・・・というかこの学年の生徒たちの間では、転入生が話題になっているらしい。
「そーいやぁ昨日道場で一護が言ってたなぁ・・・」
思い出したように、たつきもその話題に乗り始めた。
「転入生・・・?」
そういいつつも私にとっては大して興味はなかった。
去年私が転入してきたときのことを考えると、正直・・・・・・。
「そ。時期も時期だけど、すんごいガタイのいい男子がクラスに転入してきたんだって」
「「へ〜・・・」」
織姫もどうやら関心はなさそうだ。
・・・そういえば去年の今頃の彼女は、私たちにすがるように毎日を過ごしていた。
最近ではクラスの女子とも話す機会が増え、私たち3人が浮いているような微妙な空気も徐々に抜けつつある。
私がたつき・織姫以外のクラスメイトと話すことなど滅多にない ・・・など、今更言うまでもない。
教室を移動する間に その転入生を何度も目撃した。
特徴があまりにも分かりやすすぎて、嫌でも目が移ってしまうようだ。
・・・それは転入生だけでなく、黒崎も同じ・・・と言ってしまえば同じなのかもしれないが。
彼は、クラスメイトたちの情報どおり・・・とにかく体が大きい。
教室の扉に頭が当たるか当たらないかぐらいの身長に見合ったような体格をしているので、余計に大きく見える。
・・・とはいっても体が大きいだけでそんな威嚇的な空気は出していない。喧嘩っ早い性格には どうしても見えない。
髪が長く、目がしっかり隠れているが・・・ぱっと見た感じ、やはり日本人離れしているような気がする。
そしてそんな転入生が傷だらけで廊下を歩いていたのは、話題が出始めてから3日後のことだった。
[目立つヤツは・・・]というのがどうやら最近の現世でのいじめらしい。
最近ほとんど上級生にからまれることがなくなった織姫でさえ、まだ上級生に目をつけられている。
おそらく・・・私たちが3年生になるまでの辛抱なのかもしれない。
「――というわけで、なんか一護もボロボロみたいよ」
給食のお約束でもある牛乳のパックを開けながら、淡々とたつきは近況報告をした。
「さすが、男の幼なじみがいると 入ってくる情報も・・・違う、ね」
白身魚の切り身をつつきながら、私もいつもどおりの口調(?)で相槌を打った。
最近道場にはほとんど来ない、とこの間聞いたばかりなような気がするが・・・
おそらく彼らは道場以外にも関わりがあるのだろう。多分。
「まぁね。でもクラス違うと やっぱなかなか話せないからなぁ・・・」
「その、人たち・・・大丈夫?」
口いっぱいに白米をほおばりながら、織姫がようやく口を開いた。
「「織姫・・・優しい」なぁ〜・・・」
「そうかなぁ?」
当然のことを言ったまで、といった感じの口調で織姫。
「男なんてケンカしてナンボよ!あれぐらいツバでもつけときゃ治るわ!」
「ツバ って・・・」
頭からの出血は軽い傷でもかなりの量が出る。
だから石をぶつけられて軽く頭を切っただけでも、今日の黒崎はオレンジ頭が3分の1隠れるくらいに包帯を巻いていた。
「ま、どーせあいつら今頃生徒指導にお呼び出しされてるわよ」
「「・・・・・・」」
たつきがそういった瞬間に、校内放送で黒崎と・・・サド(おそらく転入生)が呼び出された。
数ヶ月ぶりにこの町に現れた虚は、以前よりも少し手強かった。
いつもなら向かい合った途端にすぐに懐に飛び込めば一撃で仮面を割ることができたのが、
少しすばやくなったせいで、いつもの攻撃がかなりの確率で防がれてしまうようになってきた。
それか、修行を怠っている自分自身のせい ・・・とも考えられるが。
[そろそろ カイホウ したらどうだ?]
嫌な声が聞こえてきた。
[しってるだろ?このチカラ――]
[ソウル・ソサエティから監視されているかもしれないことを考えろ。・・・できるわけがない]
[おまえのザンパクトウのチカラだって、なんだって、しってるぜ・・・]
[だったら・・・]
なおさら、と思ったとき。そういえば私は戦ったことがある相手がそこそこいたことを思い出した。
「――分かった。・・・やってみようではないか」
心の声をそのまま口に出すと、向かい来る虚に対して平行・・・つまり今いる場所に斬魄刀を逆手につき立てるようなポーズを取った。
「・・・力、借りるぞ」
脳裏には ソウル・ソサエティで一番美しいという噂に劣らない純白な斬魄刀と、その持ち主のほころぶ顔が浮かんだ。
そのイメージを浮かべたまま、空いている手を柄の真上にかざす。
「煌け! ・・・袖白雪 (そでのしらゆき) !!」
どこからどう見ても浅打だった普通の斬魄刀が、柄も鍔も・・・何もかも全てが白くなり、
柄の先端から 新体操で用いられるリボンのような長い布が出てきた。
この霊圧に一瞬虚の動きが止まったが、しかし奴は動じることなく・・・再び迫ってきた。
「初 (そめ) の舞・・・・・・月白 (つきしろ) !」
奴の周りを刀の軌跡で囲み、さっとその場から離れる。
徐々に虚の体が足元から凍りついてきた・・・・・・動揺しながら虚は跳躍するも、その速さよりも凍りつく速さの方が勝っていた。
この技は、刀の軌跡で囲った部分は天地構わず全てを凍らせる。
あっさり体全てを凍らせた虚の体は、これまたあっさり砕け散った。
斬魄刀の解放に頼るようでは・・・私の力も落ちたものだ、そう思いつつ刀を封印し 鞘に収めると、
ひとりで音楽を聴いて歩く転入生とすれ違った。
当たり前のことながら、今死神である私の姿は彼に見えるわけがない。
その後ろから、彼をつけるように・・・彼より年上であろう集団がなにか小箱状のものを持って歩いてきた。
タバコ、ではなさそうだ。先端から伸びている2つの棒状のものからは・・・・・・電流、が流れている?
「ぐっ・・・!!」
それを後ろから当てられた転入生は、うめき声とともに倒れた。
相当の電流が流れていたように見える。普段つけているらしきペンダントが相まったのもあるかもしれない。
そして彼らは転入生の体を重そうに担いで歩いていった。
2人と別れた下校途中に虚の霊圧を察知したらしく、さんは出て行ってしまったようです。
この義骸の留守を預かってはいるものの、正直もう少し自分(義魂丸)と本人との入れ替わりを多くしてほしいです。
この間まで1年生の教室に出入りしてたはずなのにいつの間にかフロアが変わっているじゃないですか。
あれ・・・え・・・!? さん、ここへきて解放ですか!?
しかもそこであの方の力を使うとは・・・ あぁ、きっと白い人にそそのかされたんでしょう。知らないですけど。
でも解放するってことは、よっぽどの霊力の虚なんでしょうか?
ちょっと心配なので・・・自分も向かってみます。
「な・・・・・・ライト!? なぜここに来た?」
「あれ、終わって・・・ましたか?」
自分が到着したときにはすでに戦いも終わっていて、虚襲撃の前となんら変わらない街並み(といってもただの空き地)になってました。
ちなみに[ライト]ってのは自分の名前です。さんがつけてくれました。
「さんの・・・霊圧が いきなり高くなって、苦戦・・・してるのかな、と」
「・・・・・・心配を、かけたな」
「えっ・・・あ、大丈夫、ですよ! そんな、気にしないでください」
「留守、助かった。 ・・・戻っても、いいか?」
「はい!」
虚はあんまりたくさん出てきてほしくはないですが・・・やっぱ入れ替え頻度をなんとか・・・
この願い、届きますように・・・――
さきほどの男たちを追いかけると、彼らは橋の下でなにかしていた。
・・・よく見ると、転入生を椅子に縛り付けて ぼこぼこに殴っている。集団リンチというやつだろう。
転入生の傷はみるみるうちに増えていくが、被害者である本人は全く気にも留めていない。
タフさは、どうやら見た目どおりのよう・・・だが、
鼻にピアスをつけたサングラスの男が 転入生からなにかを取り上げた。
彼がつけていたペンダントと思われる。ここからでは表情が見づらいが・・・こればっかりには動揺しているようだ。
と、・・・・・・ここが帰り道なのか、ちょうどよいタイミングで黒崎が歩いてきた。
少し物音を気にしつつも、どうやら橋の下までは見ていない。
私に気付いたかそうでないかも分からないまま、私の前を通り過ぎようとしたところで・・・
「黒崎くん!」
「あ? ・・・ああ、こないだの。どうしたんだ?」
ここでようやく黒崎の視線がこちらに戻ってきた。
「この下で・・・転入生の・・・」
「チャドか!?」
「チャド? ・・・・・・うん、多分 そう」
「分かった!ありがとな・・・!見過ごすとこだったぜ!!」
そういうとスライディングの要領で堤防から河原へと滑り降りていった。
これでこの場面はおそらくカタがつくだろう。
浦原商店までの道、途中の消防署からはあわただしく4〜5台もの救急車が出動していた。
相手の人数が確か4〜5人。・・・おそらく黒崎たちの方が勝ったのだろう。
N E X T